2016.01.29 Friday
ライフログ・シンドローム。
ぼくの会社では、社員の健康のために日常のウォーキングを推奨している。「たくさん歩いて健康になろう」というまあ、以前からよくある企業の社員の健康運動みたいなものである。社員に歩数計を配布して、健康に対する自己啓発を促すんだけど、その他にも専用のSNS的なサイトで社員が歩数情報を共有して、全社ランキングなんかが表示されたりもする。またたくさん歩いた人には、少々のインセンティブ的なおカネが支給される制度もあったりする。まあ、この辺も昔からよくある社内制度かな。
しかしそれでも歩数ランキングが掲示されると、できれば上位に表示されたいとやはり思うもので、ぼくなんかはまんまとこの仕掛けにハマってしまい、意識して歩くようにしたり、ランニング練習やイベント参加時の歩数が気になったりしている。ぼくも単純なものである。
歩数が気になるようになると、なるべく多くの歩数を得たいと思うようになる。会社から支給された歩数計は、実際よりも若干少なく歩数が表示される傾向にあるようで、当時さきこが持っていた歩数計やスマホで測定する歩数と比較してちょっとした差異があった。そこで一度、ちょっと少し値の張る歩数計を購入して使ってみたりしたんだけど、そんな折、センセーショナルに発売されたのが、スポーツメーカーのナイキが提供する「フューエルバンド」である。
フューエルバンドとは手首に巻く形で装着するウェアラブル型のライフロガー、つまり活動量計である。その日の歩数はもちろん消費カロリーや活動の度合いを示す独自単位「フューエル」を表示できたりする。常時装着しているので、歩数計を携帯してなくてもいいわけだし、それこそ起床してから就寝するまでの記録を取ることができるのである。当時は結構話題になって、ぼくの会社でも何人かの社員がフューエルバンドを着けていたし、通勤電車の中でも吊革に掴まる手首にフューエルバンドが着いていたのを何度か見たことがあった。手首に巻いても邪魔にならないところが良くて、2年くらい前に購入してからずっと着けていた。
しかし、最近になって問題が出てきた。
歩数の正確性に若干の疑惑が出てきたのだ。日々歩くことを意識していると、その日の歩数状況が何となく分かったりする。今日はかなり歩いたなーとか今日はちょっと少ないかなーといった感覚である。しかしたまにかなり歩いているにもかかわらず、歩数が伸びない日があった。その日の仕事の状況を考えると、軽く1万歩は行ってるだろうと思われるところが、7千歩を割り込むことも出てきたのだ。また、ランニング練習をした日は2万歩ほどに達するものだけど、16千歩ほどだったり、この日よりもはるかに運動強度の少ない別の日のランニング練習で2万歩を大きく超えたりするのである。以前はホントにたまにあったことだけど、最近は1、2週間に1回の割合で起こるようになった。
いや、歩数が正確に測られないというのはモチベーションが下がるものである。頑張った日もそれが過小評価されているように感じるのだ。これなら若干少なめに計測される癖のある歩数計の方が、まだマシかもしれない。このたまに起こるっていうのが、ぼくのモチベーションをじわじわと少しずつ減退させていくのである。
もしかしたら、フューエルバンドの老朽化による不具合なのかもしれない。新しいフューエルバンドを購入すれば問題は解決するのかもしれない。しかし、それも今や難しいのだ。先に書いた独自単位「フューエル」の算定方法や正確性などを争点に、海外で訴訟があったそうなのだ。その結果、ナイキ側はフューエルが歩数のような絶対的な定量単位とは言えないことを認めてしまい、これに続いてフューエルバンドの発売を中止してしまったのだ。以前はナイキの直販で売られていたフューエルバンドの在庫は、通販会社に流れていき、購入はもっぱら通販サイトを経由することになってしまった。だから新品を購入することはできなくはないんだけど、メーカーが発売を中止してしまった機器やサービスにおカネを出すことにちょっと躊躇いを感じるようになったのだ。
さてどうするか、物凄く悩んだ結果、別のライフロガーを購入することにした。
ライフロガーはフューエルバンドが出る前からいくつかのモデルが出ていて、ファッショナブルなフューエルバンドが流通する中で、他社の機器も最近はだんだんスタイリッシュになっていった。そうであれば、本来こういう機器を作ることがメイン事業でないナイキの機器よりも、もっと得意なメーカーがあるハズである。
そんなことを考えて、ライフロガーの商品比較のサイトなんかを覗いていたら、某社のライフロガーに行き当たった。
最近のライフロガーは、デジタル時計の文字盤が常時表示され、だからその視認性を高めるためか、幅が結構ある形になっていた。フューエルバンドはかなり幅が狭い形状だったので、これに近いものが欲しかった。デジタル時計が常時表示される形だと、腕時計を2本つけているような、いやたまにそういうファッションの人もいるけど、そういう前衛的な人に思われちゃう恐れしね。
今回見つけたのは、デジタル時計は常時表示されないし、普通にしていれば黒い腕輪が巻かれてるだけのように見える。もともとぼくの左手首には、腕時計やライフロガーの他に2本の数珠が巻かれていて、いやこれに宗教的意味合いはなくて、単にさきこが買ってくれたものをお守りとしてつけてるだけなんだけど、とにかく左手首だけ結構じゃらじゃら着いちゃっているわけで、このライフロガーならフューエルバンドと同様、着けててもあまり煩くならないのである。
そんなわけで、さきこに何とかお願いし、いやもう去年の買い物列伝を鑑みれば、いくら物欲が発動してもさきこにオネダリするのは絶対にできないのだけど、そこを何とか頼み込んで購入することができた。
今日からライフロガーは新しくなったのである。
半日程度使ってみた感想だけど、フューエルバンドよりもカウントされる歩数が若干多いような気がする。起床してライフロガーを装着して、出勤し会社で午前を過ごすと、デスクワークのぼくはだいたい4千歩弱なのだけど、今日は4千歩半ばといった感じである。これは何やら期待できるかもしれない。そう思ってぼくのウォーキングへのモチベーションはぐんぐん熱を帯びて上がっていくばかりである。
それにしてもライフロガーを購入したぼくは、左手首に巻かれた小さな機器に翻弄されたものである。まるで生活をライフロガーで測るというよりも、ライフロガーで生活がコントロールされてる気さえしてくる。独自単位のフューエルの算定根拠を求めて裁判にまで踏み切った人たちも、もともとはライフロガーの表示と実生活がうまく連携していないと感じるところから、つまり、ぼくが最近フューエルバンドに感じていたことから不満が芽生えて大きくなっていったんだろうと思うにつけ、新しい機器に変わったと言っても、ぼくは彼らとほとんど変わらない境地にいるのかもしれない。
さてぼくのライフログ・ライフはこれからどうなっていくのかね。
しかしそれでも歩数ランキングが掲示されると、できれば上位に表示されたいとやはり思うもので、ぼくなんかはまんまとこの仕掛けにハマってしまい、意識して歩くようにしたり、ランニング練習やイベント参加時の歩数が気になったりしている。ぼくも単純なものである。
歩数が気になるようになると、なるべく多くの歩数を得たいと思うようになる。会社から支給された歩数計は、実際よりも若干少なく歩数が表示される傾向にあるようで、当時さきこが持っていた歩数計やスマホで測定する歩数と比較してちょっとした差異があった。そこで一度、ちょっと少し値の張る歩数計を購入して使ってみたりしたんだけど、そんな折、センセーショナルに発売されたのが、スポーツメーカーのナイキが提供する「フューエルバンド」である。
フューエルバンドとは手首に巻く形で装着するウェアラブル型のライフロガー、つまり活動量計である。その日の歩数はもちろん消費カロリーや活動の度合いを示す独自単位「フューエル」を表示できたりする。常時装着しているので、歩数計を携帯してなくてもいいわけだし、それこそ起床してから就寝するまでの記録を取ることができるのである。当時は結構話題になって、ぼくの会社でも何人かの社員がフューエルバンドを着けていたし、通勤電車の中でも吊革に掴まる手首にフューエルバンドが着いていたのを何度か見たことがあった。手首に巻いても邪魔にならないところが良くて、2年くらい前に購入してからずっと着けていた。
しかし、最近になって問題が出てきた。
歩数の正確性に若干の疑惑が出てきたのだ。日々歩くことを意識していると、その日の歩数状況が何となく分かったりする。今日はかなり歩いたなーとか今日はちょっと少ないかなーといった感覚である。しかしたまにかなり歩いているにもかかわらず、歩数が伸びない日があった。その日の仕事の状況を考えると、軽く1万歩は行ってるだろうと思われるところが、7千歩を割り込むことも出てきたのだ。また、ランニング練習をした日は2万歩ほどに達するものだけど、16千歩ほどだったり、この日よりもはるかに運動強度の少ない別の日のランニング練習で2万歩を大きく超えたりするのである。以前はホントにたまにあったことだけど、最近は1、2週間に1回の割合で起こるようになった。
いや、歩数が正確に測られないというのはモチベーションが下がるものである。頑張った日もそれが過小評価されているように感じるのだ。これなら若干少なめに計測される癖のある歩数計の方が、まだマシかもしれない。このたまに起こるっていうのが、ぼくのモチベーションをじわじわと少しずつ減退させていくのである。
もしかしたら、フューエルバンドの老朽化による不具合なのかもしれない。新しいフューエルバンドを購入すれば問題は解決するのかもしれない。しかし、それも今や難しいのだ。先に書いた独自単位「フューエル」の算定方法や正確性などを争点に、海外で訴訟があったそうなのだ。その結果、ナイキ側はフューエルが歩数のような絶対的な定量単位とは言えないことを認めてしまい、これに続いてフューエルバンドの発売を中止してしまったのだ。以前はナイキの直販で売られていたフューエルバンドの在庫は、通販会社に流れていき、購入はもっぱら通販サイトを経由することになってしまった。だから新品を購入することはできなくはないんだけど、メーカーが発売を中止してしまった機器やサービスにおカネを出すことにちょっと躊躇いを感じるようになったのだ。
さてどうするか、物凄く悩んだ結果、別のライフロガーを購入することにした。
ライフロガーはフューエルバンドが出る前からいくつかのモデルが出ていて、ファッショナブルなフューエルバンドが流通する中で、他社の機器も最近はだんだんスタイリッシュになっていった。そうであれば、本来こういう機器を作ることがメイン事業でないナイキの機器よりも、もっと得意なメーカーがあるハズである。
そんなことを考えて、ライフロガーの商品比較のサイトなんかを覗いていたら、某社のライフロガーに行き当たった。
最近のライフロガーは、デジタル時計の文字盤が常時表示され、だからその視認性を高めるためか、幅が結構ある形になっていた。フューエルバンドはかなり幅が狭い形状だったので、これに近いものが欲しかった。デジタル時計が常時表示される形だと、腕時計を2本つけているような、いやたまにそういうファッションの人もいるけど、そういう前衛的な人に思われちゃう恐れしね。
今回見つけたのは、デジタル時計は常時表示されないし、普通にしていれば黒い腕輪が巻かれてるだけのように見える。もともとぼくの左手首には、腕時計やライフロガーの他に2本の数珠が巻かれていて、いやこれに宗教的意味合いはなくて、単にさきこが買ってくれたものをお守りとしてつけてるだけなんだけど、とにかく左手首だけ結構じゃらじゃら着いちゃっているわけで、このライフロガーならフューエルバンドと同様、着けててもあまり煩くならないのである。
そんなわけで、さきこに何とかお願いし、いやもう去年の買い物列伝を鑑みれば、いくら物欲が発動してもさきこにオネダリするのは絶対にできないのだけど、そこを何とか頼み込んで購入することができた。
今日からライフロガーは新しくなったのである。
半日程度使ってみた感想だけど、フューエルバンドよりもカウントされる歩数が若干多いような気がする。起床してライフロガーを装着して、出勤し会社で午前を過ごすと、デスクワークのぼくはだいたい4千歩弱なのだけど、今日は4千歩半ばといった感じである。これは何やら期待できるかもしれない。そう思ってぼくのウォーキングへのモチベーションはぐんぐん熱を帯びて上がっていくばかりである。
それにしてもライフロガーを購入したぼくは、左手首に巻かれた小さな機器に翻弄されたものである。まるで生活をライフロガーで測るというよりも、ライフロガーで生活がコントロールされてる気さえしてくる。独自単位のフューエルの算定根拠を求めて裁判にまで踏み切った人たちも、もともとはライフロガーの表示と実生活がうまく連携していないと感じるところから、つまり、ぼくが最近フューエルバンドに感じていたことから不満が芽生えて大きくなっていったんだろうと思うにつけ、新しい機器に変わったと言っても、ぼくは彼らとほとんど変わらない境地にいるのかもしれない。
さてぼくのライフログ・ライフはこれからどうなっていくのかね。