2月最終日曜日は、テレビで東京マラソンを観戦する日・・・なんて決まってるわけじゃないんだけど、今年も例によって抽選に当たらなかったので、指を咥えて見てるだけという過ごし方になった。ランニング仲間の何人かは当選して、上々の天気に下でランニングを楽しんだようである。いや〜いいな〜。
さて、東京マラソンに出られないけど、東京マラソンを疑似体験しようと、今年も前日の土曜日に開催されたフレンドシップランに参加して5キロほどを走ってきた。
東京マラソンに参加するために来日した外国人とランニングを通して交流しようという企画で、参加者の半分以上が外国人である。去年初めて参加して外国人と交流する楽しさを体感して、ぜひ毎年参加しようと思ったものである。ちなみに仮装して参加する人も多くて、この仮装をきっかけに外国人に話しかけられることもあるみたいである。特に日本を象徴するような仮装は、外国人に大人気だったな。富士山や寿司を頭の上にいただいた姿は、多くの外国人がら記念写真を求められていた。
外国語はまったく喋れないけど外国人とは交流したいとの思いだけは強いぼくは、去年参加した際に仮装した日本人が外国人に大人気な様子を見て、次に参加する時にはぜひ仮装をしようと決めていた。できれば寿司のハリボテを作って頭に載せるくらいのことはしたかった。結局のところ、ハリボテを作るノウハウもなければ、作ってる時間もなかったので、寿司ネタを頭に載せて走るという企画は実現しなかったけど、それでも注目を集める何らかの仮装はしたいと思っていた。
そこで思いついたのが風車である。
さきこが2015年の東京マラソンで、ランニングキャップにつけて走ったものである。風を受けて頭の上でクルクル回る風車は沿道で応援する人に大好評で、さきこは絶えず声援を受けて走ることができたそうな。
ぼくは風車を付けて走ったことはないので、いい機会だからこれで走ってみようということになった。日本人にウケたということは、陽気な外国人にはバカウケするハズである。
でも今回のフレンドシップランに参加するにあたり、ひとつ残念なことがあった。このイベントにおけるフィニッシュ地点が、翌日開催される東京マラソンのフィニッシュ地点と異なることである。東京マラソンは今回からコースを変更し、お台場の東京ビッグサイトはフィニッシュ地点ではなくなってしまった。東京マラソンのフィニッシュを1日早く経験できるという企画ではなくなってしまったのである。
それでも風車が外国人にウケて、たくさんの人と話しができれば楽しいだろうなーと思い、当日勇んで出かけて行ったのである。
しかし、結局のところ、風車は外国人にまったくウケなかった。
声がかけられないばかりか、視線さえ向けてくれなかったのだ。ぼくの他に外国人の興味を根こそぎさらっていくような仮装の人もいなかったし、長身の外国人ランナーの頭一つ上で風を受けた風車がギュンギュン回っているのである。控えめに言ってもこれはかなり目立っていたハズである。それなのに、まったくの一言も声がかけられなかったのだ。まさに「ガン無視」である。いや、もっと酷いな。ウケると思ってまったくウケない状況はまさに「ダダ滑り」である。こんなお寒い状況になるとは、まったくの予想外だった。
ランニングがスタートして、ぼくとさきこは一緒に走り始めた。5キロほどの距離なので、楽しく談笑して走ればいいのだけど、ぼくの笑顔は妙に引きつっていたと思う。ガン無視されてダダ滑り、外国人は日本人よりも個性を重んじると聞いていたのに、これほど個性的な仮装で走ってるぼくに何の言葉もないのだ。お寒い空気に針のムシロというか、いやもう居たたまれない気持ちである。早いところ走り切って、この状況を脱したかった。
そんな時である。
「風車ー!いいねー!」と声をかけられたのだ。沿道に立つイベントスタッフの方である。もちろん日本人である。おお、こういう声を待っていた。嬉しいわー。
その後もスタッフや沿道で散歩がてら応援してくれる人に声をかけられた。すべて日本人である。結局、外国人から風車のことで声をかけられることは最後までなかった。日本人と外国人で対応がここまで際立って違っていると、何か意味がありそうである。
たとえば、風車であるかどうかは別として、「頭の上でクルクル回っていること」自体に何らかのネガティブな隠喩があるのかもしれない。頭の上で風車が回っていることは、外国人にとってはもはや声をかけることすら憚られる、眉をひそめてしまうほどドン引きな意味が隠されているかもしれない。ちなみに、外国人と言っても、アジア系、白人系、南米系(?)がほぼ同数で、いや若干アジア系が多かった感じかな?特に台湾と香港が目立っていたからね。だからいわゆる宗教的な理由は少ないんじゃないかと思う。親日の台湾人からもガン無視されたんだからね。
ちなみにさきこは、外国人に「風車」が分からなかったのかもしれないと言っていた。いわゆる「風車(ふうしゃ)」は分かるけど、その小型版である風車(かざぐるま)にどうツッコんでいいか分からなかったのではないかとのことである。うん、たしかに、ぼくの仮装は何かに扮装するという意味での「なりきり系の仮装」ではなく、面白いことをやってツッコんでもらう「ツッコみ系の仮装」だった。ツッコみ系の仮装の場合、その仮装に対する理解がツッコむ側にも必要である。それが何か分からないとどうツッコんでいいのか戸惑ってしまうというわけである。またさらに考えを発展させると、仮装とかコスプレに対する根本的な動機や理解に大きな差があるのかもしれない。
いずれにしても、国際交流とか相互理解とかとはまったく逆行した結果に終わってしまい、ぼくの気持ちはダダ下がりである。東京マラソンを走れず、その疑似体験もできず、そして外国人と楽しいコミュニケーションをとることもできなかったわけである。今までこれほど手応えのないランニングイベントはあっただろうか。何のためにここまで来たんだろう。
ガン無視ダダ滑りのキツい対応を受け、ヘコんでしまったぼくは、さきこにお願いして帰りに羽田空港に行くことにした。幸いなことに、ここで青空に飛び立つ飛行機なぞ見ていたら、だんだん気持ちが上向いてきて帰宅する頃にはいつもの元気が戻ってきてくれた。
さて、来年はどうするか。
いや、東京マラソンのコースが変わってしまった今となっては、このイベントに来年も出る意味がないかもしれない。5キロほどを走るために早起きしてお台場まで出かけるのも大変だしな。
来年までちょっとゆっくり考えてみようと思う。
いや、違うな。来年は東京マラソンに当選すればいいのだ。それで東京マラソン本番に向けた最後の練習として、フレンドシップランに参加したらどうかね。
ぜひそういう光景があることを願っている。
※念願の風車を頭に載せてちょっと嬉しそうなぼく。